相続税申告の落とし穴。こんな場合は申告が必要です!

こんにちは。大田区池上のママ税理士、砂押ちひろです。

 

今日は、関係ないようで意外に身近だったりする「相続税」のお話をします。

 

昨年、私のもとに「相続税の申告書を作成してほしい」という依頼がありました。

この依頼は、相続税の法定申告期限後の依頼、いわゆる「期限後申告」の依頼でした。

 

期限後申告の依頼自体は、そう珍しいことではなかったのですが…。

今回は、依頼者のちょっとした勘違いから、

本来払わなくてよい税金を払わなくてはいけなくなってしまったという、

非常にもったいなく、そして印象に残るケースとなりました。

 

この依頼者はBさんといい、Bさんのお母様Aさんが亡くなったことから、

Bさんと、Bさんのお兄様CさんとでAさんの財産を相続しました。

 

ここでAさんの財産は、

・土地5,000万円

・現預金3,000万円

(建物はほぼ価値なしのため、説明の便宜上0円とします)

でした。

 

相続税の申告上、基礎控除(※1)というものがあり、

相続財産の評価額の合計が基礎控除以下だと、基本的に相続税の申告は不要です。

 

(※1)基礎控除とは… 3,000万円+600万円×法定相続人(※2)の数

この金額を、相続財産の価額から差し引いて相続税を計算します。

 

(※2)法定相続人とは… 相続する権利がある人のこと。

誰が法定相続人になるかは、家族構成によって異なります。

 

今回のケースでは、相続財産の合計は8,000万円…

と言いたいところなのですが、

Aさんの自宅にはBさんも同居しており、Aさんの亡きあとは引き続きBさんが住んでいました。

このような場合、「小規模宅地等の特例」という制度を使い、

自宅の土地の評価を80%減額することができるのです。

 

小規模宅地等の特例を使った場合、

 

土地の評価は5,000万円×(1-0.8)=1,000万円

となります。

 

そのため、Aさんの財産の合計は、

上記土地の1,000万円+現預金3,000万円=4,000万円

となり、

基礎控除3,000万円+600万円×2人(法定相続人の数)=4,200万円

の範囲内に収まるため、

相続税の申告は不要となるわけです。

 

…ただし、申告期限内に申告をしていた場合であればね。

 

実はこの依頼者Bさん、

ネットの情報の聞きかじりで、小規模宅地等の特例という制度がある旨を知っていたのです。

引き続き相続人が住んでいるから小規模宅地等の特例が使える

=財産総額が基礎控除以下だから申告不要だよね、と考えていたようです。

 

しかし、この特例を適用するためには期限内の申告が条件付けられていることまでは知らず、

申告期限を過ぎても申告書は提出していませんでした。

 

申告期限後、Bさんは土地の相続登記をするために司法書士さんのもとを訪れました。

その際、司法書士さんから申告漏れを指摘され、

大慌てで私のもとに申告書作成の依頼が来たということでした。

 

時はすでに遅し、申告期限を過ぎてからの依頼だったため、

小規模宅地等の特例は使えず

5,000万円の評価額をもとに相続税の計算をすることになりました。

 

その結果、

Bさん 相続税 約300万円、無申告加算税 約15万円、その他延滞税

Cさん 相続税 約160万円、無申告加算税 約8万円、その他延滞税

が課されることになってしまいました。

 

つまり、Bさんの判断は何が間違いだったかと言うと、

 

小規模宅地等の特例は申告期限内に申告書を提出しなければ使えない!

(相続税の配偶者控除も同様です)

 

ということであり、

 

・申告期限内に申告しなかったため、申告していればかからなかった税金 約480万円(その他延滞税)

を払う羽目になってしまった。

 

という、非常~~~に勿体ないことになってしまったというお話でした。

 

ネットの情報を否定するつもりはありません。

しかし、ネットには信頼できない情報も一定数含まれていることは確かであり、

また、信頼できるもの情報であっても、

個々の状況によってはそれが適用できないものである場合もあります。

 

このような残念なことが少しでもなくなるよう、

万が一ご家族の相続が発生した際には、

「申告しなくていいのかな?」

「相続税はどれくらいかかるのかな?」

など、ちょっとした不安や疑問でもお気軽に、税理士等の専門家にぶつけてみてください。